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北海道の冬は暖かい!これは、九州育ちの私が旭川にきて、厳寒で大雪の初めての冬に感じたことである。外は確かに信じがたい冷たさであるが、風呂上がりにビールが飲め、アイスクリームも食べることができるいうのは、もっと信じられないことであった。職場でも、飲み屋でも同じく室内は天国、常夏という感じであった。
では、九州の夏は涼しい!と言えるかというと、最低私が過ごした時はそうではないし、夏に仕事などで出かける内地の最近の様子でも、そうは言い難いのではないだろうか。
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夏。まぶしくやけつく太陽、汗ばむ暑さ、寝苦しい夜。九州の夏はまさにそのような季節であった。だが、夏はどこであれ似たようなものであろう。夏という季節は、青春というか、大人になっていくための半人前の時代を連想させる。「太陽の季節」や「異邦人」も暑苦しい夏が大きな場面になっていたと思う。若さは、猛暑の中、いろんな有り様で、もがき苦しむことができる。反抗的で暴力的になったり、ひとひねりした正義感に燃えたり、引きずってきたものを必死に振り払おうとしたり、虚無的で退廃的にあがいたり、人それぞれにひたすら何かに向かっていく。大きな夢を追いかけているような、いや、夢の中でよろこび、怒り憤り、嘆き悲しみ、なぐさみやすらいだりしているような感じなのかもしれない。
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時は人を待たない。夏はくりかえし巡ってくる。夏のあがき、若き日の不安定さは、歳をかさねるとおだやかになる。成長というのは、無限の可能性をつぶしていくものであるといわれたりする。夢は次第にかけてゆく。さみしいものだ。
夏の暑さに汗ばみながら、やれることを不器用に精一杯やって、ひといきつける夕方。暑さは残るが、昼間の灼熱と比べると涼しくなる。そんな中、ビアガーデンで飲む冷たいビールはおいしいものである。まわりの若者をはために、まだくすぶりながら残る夢を想いながら、、、