心の手帳 63号(2020年10月)

小春日和

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 木々の葉が少しずつ色づき始め、雪虫がちらほらと見えるようになってまいりました。日々、風が冷たくなるのを感じるこの頃ですが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。私は、寒い日が続く中でふと暖かい日が訪れると、それだけで嬉しい気持ちになります。「小春日和」というのは、そんな初冬の暖かい日をさす言葉と聞きます。調べてみると、この時期の陽気が春先のうららかさに似ていることから「小春日和」と呼ばれるようになったとか。一度知ると、確かに、暖かい日差しは春先を思わせるように感じます。木々を彩っているのはお花ではなく紅葉ですが、少しだけ立ち止まり、彩りに思いを馳せるのも、秋の醍醐味かもしれません。
 皆様も、お体にお気を付けになって、深まる季節をお楽しみになれますように。

「エリクソンの秘密」

村澤 和多里(心理臨床センター研究員?本学教授)
 私もうっかりすると忘れがちなのですが、実は私は青年心理学を専門にしているようです。そんな訳で、本日は青年期の「アイデンティティ」概念で有名な、E.H.エリクソンの名前についてお話しします。「アイデンティティ」は「自我同一性」とも訳されますが、自分が何者であるのかという意識のことですね。
 さて、この「アイデンティティの確立」ですが、実はエリクソン自身が苦労して成し遂げた心理的課題でもありました。エリクソンは、オーストリア生まれのユダヤ人でもともとの名をエリク?ホーンブルガーといいました。しかし、「ホーンブルガー」という名字は母が再婚した義父のものであり、エリク青年にとっては違和感のあるものでした。エリクは青年期をボヘミアン(ヒッピー)の絵描きとして放浪生活についやしていたのですが、ある時に精神分析の始祖であるフロイト家に家庭教師として入ることになります。しかし、精神分析家となったころにはナチスが台頭してきて、エリクはアメリカに亡命せざるを得なくなるのです。
 アメリカに移住したエリクは、あまりにもの文化的ギャップにアイデンティティ喪失におちいります。また「ホーンブルガー」という名字は「ハンバーガー野郎」という悪口のネタにされてしまうのです。このような逆境のなかで、エリクは心理的危機を乗り越えるべく、自らに新しい名前をつけてアメリカ人としての国籍をえます。それが「エリクソン」という名前です。Erik(エリク)のSon(息子)、つまり「自分は自分の子供である」という、まさにアイデンティティを意味するような名前をつけるのです。
「エリクソン」という名前に込められた秘密、いかがでしたか?

実習生(大学院生)のつぶやき

 『院生室に「はな」が無い』と言われ、私は「院生室に華が無い!?」と思い、ゴージャスな院生室や院生の姿を想像しつつ焦っていました。しかし、それは同音異義の早とちりで、植物の「花」であるとわかり、ひと安心。花や植物をみることで心の豊かさを育む、という話をきいた時の出来事でした。
 早とちりついでに同音異義語で遊んでみると、「花をみる」と言ってもこれまた「見る、看る、視る、観る…」と同音異義語がたくさんあることに気づきます。さらに類義語にも「眺める、睨む、愛でる…」等々。「みる」という行為には色々漢字があるように、たくさんの意味や方法があって面白い。
試しに、私が花へ色々とまなざしを向けてみると…花は何も言わず、ただ、そこに在ってくれます。(Y.F)