心理?教育専攻の藤野ゼミ(3年次専門ゼミナール)では、「“私”の知らない世界を知る」をゼミテーマに掲げています。自分にとって当たり前でない世界に触れ、人間の多様性とそれを包摂する社会について考えることを目指しています。
今年度の学びの柱の一つが「盲ろう者の世界」です。盲ろう者とは、「見えない?見えづらい」と「聞こえない?聞こえづらい」の二つの状態を併せ持つ人のことです。4月から映像資料や文献を使って基礎知識を得てきました。そして6月29日、盲ろう当事者をゲスト講師としてお招きして、念願の講演会を開催しました!
講師は、NPO法人札幌盲ろう者福祉協会理事の松浦美紀子さんです。まず、盲ろうとはどういう状態かについて説明された後、盲ろう者のコミュニケーション方法を実演付きで紹介してくださいました。松浦さんは「ろうベースの盲ろう者」で、対面のコミュニケーション手段は触手話を使います。今回の講演には、通訳?介助員2名が同行し、松浦さんの日本手話を音声日本語に通訳してくださいました。また、フロアからの質問は通訳者が日本手話で表し、松浦さんはその手の形や動きを触れることで発言内容を把握します。
協会がご用意くださった視野狭窄メガネを使って、弱視体験もおこないました。相手の顔や手話が見える距離を探ったり、狭い視野での読み書きをしたり、すべてが初めての体験でした。
後半は、盲ろう者の日常生活について、松浦さんの具体的なエピソードをふまえてお話しくださいました。盲ろうの人たちにとって、人と会って会話を楽しむこと、人との会話を通して情報を集めることがどれだけ大切か。松浦さんの素敵なお人柄とユーモアにあふれたお話をとおしてしっかり理解できました。
盲ろう者が使用している機器や道具も持ってきてくださいました。触れて時刻を確認できる時計、点字表記のカレンダー、松浦さんが普段お料理に活用されている調理器具。そして点字出入力でメールのやりとりができ、インターネット記事やテキストも点字で読める「ブレイルセンス」。早いスピードで現れる点字をスラスラと読みこなす松浦さんの姿に驚きを隠せない学生たちでした。
本当に密度の濃い時間でした。今回の講演会で得た学びを今後のゼミ活動に生かしていきたいと思います。松浦さん、通訳?介助員の山口さんと三上さん、そしてNPO法人札幌盲ろう者福祉協会の皆様、どうもありがとうございました!