人間科学科

Department of Human Sciences

【人間科学科】藤野友紀:教員紹介

2008.04.10

お知らせ

藤野友紀:教員紹介

藤野友紀:教員紹介


専門は発達心理学です。人間は生まれてから死ぬまで変化していく存在です。それも一人で変化するのではなく、ある特定の時代背景の下で、特定の社会の中で、人々との交わりをとおして変化していきます。その変化のプロセスを探ることによって人間とは何かを知ろうとする。そこにこの学問のおもしろさがあると考えています。
私を発達心理学に導いてくれたのは、日常の実践の中で生きる多くの人々との出会いです。学生時代から保育所、幼稚園、学童保育所、通所施設、小規模作業所といった実践現場に出入りしてきました。そこは人間の可笑しさ、哀しさ、たくましさに溢れた、何とも豊かで厳しい世界。でも、とにかく「おもろい」ことが詰まっていました。これらの実践から切り離さずに人間を理解すること、実践の中で人間の発達を捉えて言語化していくこと、それが私の仕事だと思っています。

現在関心をもっているのは、保育という営みの中で見られる人間の発達です。保育現場で長く観察を続けていると、さまざまな場面に遭遇します。ある子どものドラマティックな変化を目の当たりにすることもあれば、うまく表現できないけれどもいつの間にか何かが確かに変わったと感じられることもあります。多くのものが複雑に絡みあって生じるそれらの変化を掬い取るのは、難しくもおもしろい作業です。ここ数年は特に、乳幼児期の重要な活動である遊びに焦点を当てて、就学前保育施設でフィールドワークをしています。
人間科学科では「発達心理学A?B」を担当しています。「発達心理学A」では、主に乳幼児期を取り上げて、人間が人間になっていくプロセスを理解していきます。単に知識を身につけるのではなく、「私」という存在の成り立ちに思いを巡らせ、これまでとは少し違った視点で人間を捉えることができる。そのような講義をめざしています。「発達心理学B」では、実践やコミュニティにさらに重きを置いて人間の発達を考えていきます。保育という営みをとおして人間はどのように発達していくのか、コミュニティとの関係によって「障害」の表れ方はどのように変化するのか、そのとき「支援」の意味合いはどのように捉え直されるのか。こうしたテーマを具体的な事例に基づいて考察します。

3年生の「専門ゼミナール」はまだ始まったばかりで、これから学生の皆さんとともに創り上げていくところです。私もそうですが、学生の皆さんもまた、一人一人が独自の歴史を背負った個性あふれる存在です。ゼミでは、そうした自分の好きなことや関心のあることをベースにして、問いを立てる力、物事をおもしろがる力、相手と対話する力をつけていくことをめざしています。私はあまり勉強熱心な学生ではありませんでしたが、今から振り返ると、何かを学べたと思うとき、そこには必ず仲間がいました。文献と格闘したときも、実践現場での出来事に圧倒されたときも、卒論を苦しんで書き上げたときも。このゼミもそのような場になればと願っています。
また、学生の皆さんにはできるだけ学外の実践現場や講演会に出かけていくことを推奨しています。実際にいろいろな人に出会い、いろいろな物事を見聞きすることによって、想像力が広がるからです。そうすると社会へのまなざしも変わるし、自分へのまなざしも変わります。それは大学生に許された贅沢な経験だと思うのです。

  • 発行日: 2008.04.10