専門ゼミナール(河合ゼミ)3年生のWさんが、教員のフィールドワークに参加しました。
場所は、札幌市内にある福祉施設「チャレンジキャンパスさっぽろ」。
知的障がいのある青年たちが自分らしく社会を生きられるようになるために、数々の支援活動が行われています。
その支援活動の一つとして、書道の時間があるのです。
大学では社会心理学を教えている河合講師が、ここでは書道を教える先生に大変身!
施設の青年たちに交じって、Wさんも一緒に書きます。
後日、Wさんに感想を聞いてみました。
『私がイメージしていた書道と全く違っていてびっくりしました』
『みんな思い思いの言葉を自分なりの書風で表現していて、自由な雰囲気でした』
そうなのです、この書道教室には「お手本」がありません。
どんな言葉を書くか、どんなふうに書くか———それは自分で考えて、自分で決めるのです。
Wさん、まずは恐る恐る、「北海道」「夏休み」という言葉からスタート。
自由に書いていいとは理解しつつも、本当に書くべき自由な言葉とはいったい何なのかを、慎重に探っているような様子です。
しだいに、周りの青年たちが一切の躊躇いなく次々と作品を量産していくさまに感化されたのでしょうか。
「たくさんねたい」「髪を染めたい」のように、少しずつWさんの率直な表現が見られ始めました。
心なしか、筆も明るく踊っているようで、先ほどまでの緊張はほとんど感じられません。
この施設に通う青年たちは、日々たくさんのことを考え、人に伝えたい思いにもあふれています。
でも、その思いをうまく言葉にできなかったり、いざ相手を目の前にすると固まって何もできなくなってしまうことも少なくありません。
しかし、書の世界ではそんなのおかまいなし。
ふだんの様子からは想像もつかないくらいの熱量で、数々の思いが作品となって表出されるのです。
このインパクトを深く知る最良の方法は、やはり実際の現場に足を運ぶことです。
その身体と心のすべてでもって、場のダイナミズムを体感し、経験する———まさに「百聞は一見に如かず」ですね。
どうやらWさんも現場から「何か」を感じ取った様子。
今回の経験がこれからの学びにどう関わっていくのか、とても楽しみです。
ちなみに、Wさんが参加してくれたことに対して、施設長からは「いつもとは違う雰囲気になりました」という喜びの声が寄せられました。
学生が一方的に学ぶだけでなく、その学生の存在が、現場にもポジティブな学びと変化をもたらす。
このような「学び合い」「変わり合い」が自然に生まれるのも、フィールドワークの大きな魅力なのです。