人間科学科では「共生社会の担い手を育成する」が学科の目標です。ソーシャルワーク専攻の1年生を対象とした演習では、「共生社会」の理解のための導入として「世界がもし100人の村だったら」のワークをいくつか体験しました。
世界には多様な国、民族、ジェンダー、言語、習慣、宗教、文化的背景、社会階層の人が暮らしていますが、そこにはさまざまな排除や抑圧の問題も潜んでいます。それを少しだけ体感する演習です。最初に人権活動家のマララ?ユスフザイさんの2013年の国連本部でのスピーチを動画で視聴し、テーマとなっている人権と社会正義について理解しました。
演習ではまず、参加者それぞれに手渡されたカードに記載されている情報に基づいて(国、言語、ジェンダー、年齢など)簡単なワークをいくつか行いました。最初は、自分のカードに記載されている言語で「こんにちは」の挨拶を行って、互いの挨拶が通じる同じ言語の人を探し、グループをつくって座るというワークでした。聞いたことのない言語や民族もたくさんありました。
また、参加者のなかから、3人出てきて家族の役割をとってもらい、お腹が痛い子ども、心配する両親の役割が割り振られました。両親は字が読めないという設定で、薬局に行って薬を買ってくるという課題でした。薬局を想定したコーナーでは、3つのコップのなかからひとつを選ぶことになりました。ちなみにコップには、多くの日本人が判読できない言語で、「水」、「薬」、「毒」と書かれていました。両親はそもそも文字が読めません。
母親が最初にとったコップを素直に飲んだ子ども役の人は一口飲んで顔をしかめ、「毒」(実際には塩水)をいやがりました。次にとったのは「薬」でした。両親は文字が読めませんが、臭いで2つをかぎ分けて無事に「薬」のコップをとりました(実際はマスカット味の水です)。
世界には14%ほどの人が文字を読めず、女性の方が多いという数字を聞いてみんな驚いていました。
そして最後に、カードに記載された記号ごとにグループを再編成し、そのグループごとに世界の富の分配を受けることになりました。あるグループはたくさんの金貨、あるグループはほんの小さな金貨が2個など、その分配は同じではありません。グループで、どんな気持ち?どうしてこうなったと思う?最も貧しい人に対してどう行動する?などを話し合いました。
興味深いのは、金貨がジャラジャラともらえたグループでは話合いは盛り上がり、金貨が小さくて少ないグループはしんみりとして、金貨の多いグループとの不公平感を強く感じていました。世界の全人口の上位10%の人が全世界の81.7%の資産を保有する現状(2019年)について説明を聞いて、世界は平等ではないことを体験し、対立や戦争が起こりやすい状況を容易に想像できたと思います。
ソーシャルワーク入門演習では、これから雇用や育児といった問題について現代日本の直面する課題にむけて、文献を読んだり、話し合ったりして深めていきます。