今年も経済学部公開講座を9月から行っています。今年のテーマは
「北海道における1次産業の現状と課題」です。
6回から10回までのご講演の様子をダイジェストでお伝えします。
第6回目は北海道漁業協同組合連合会 代表理事常務の菊池 元宏 様から「道産水産物の優位性と国内外の流通動向について」というタイトルで講演していただきました。講演では、漁業の現状と今後の動向についてとそれに対する「ぎょれん」の取り組みについて詳しく解説いただきました。道内も含めた漁業生産は減少傾向にあり、国内消費も減っているという現状ではあるが、世界人口は増え続けていることから輸出に力を入れていて、それを支えるためにHACCPといった資格取得にも積極的に行い、安全面への取り組みを行っていることも紹介されました。今回のテーマでよく話題に上がる後継者問題については漁業が中心の渡島地方は先行きが不透明であることから高齢化が進んで後継者がいないという状況であるのに対して養殖業が盛んなオホーツク海ではあまり高齢化が進んでいないなど生産者によって問題の捉え方が異なることがわかりました。学生からは北海道ブランドを維持するための植樹などの取り組みに興味を盛ったようです。
第7回目はしもかわ森林未来研究所の 春日 隆司様から「『森林未来都市』から『SDGs未来都市』へ」というタイトルでご講演していただきました。下川町は林業で先駆的な活動を行っている町ですが、それを支えているのが60年をサイクルとした循環型森林経営です。その経営方法についての考え方を解説いただきました。また、バイオマスエネルギーの利用については積極的に行い、子育て支援などに投資しているという町の体制を紹介されました。さらに、カーボンオフセットについて詳しく解説され、企業との連携にも触れていました。地方都市をどのように活性化するかといった事例として下川町の取り組みを学べたことは大変貴重な経験でした。
第8回目は江別製粉株式会社 代表取締役社長の安孫子 俊之 様から「変貌する北海道産小麦需要」というタイトルで講演していただきました。まず小麦の基本的な情報として、なぜ製粉して販売しなければならないか、大手が75%の生産シェアがあること、外国産がほとんどで国内産は14%程度であること、グルテンの量により小麦の用途が異なることなどが紹介されました。その中で国内産の小麦の立場が過去とは変貌し、重要視されているとの解説がありました。また、北海道産小麦を利用した有名料理店やベーカリーなどを紹介、大手製パン会社やコンビニエンスストアでも重宝されているなどの事例の紹介がありました。その中で、国内産小麦需要にこたえるために供給の安定、品質の安定、価格の安定が必要であると提言され、小麦の現状と将来展望がわかりました。
第9回目は長沼町グリーンツーリズム運営協議会会長の柳原 寛 様から「食育、農業の現場より情報発信」というタイトルで講演していただきました。長沼町はグリーンツーリズムといって農業体験や農泊などの取り組みを行っていて、主に札幌市内の小中学生や本州の修学旅行生に対する農業体験を行っています。これらの活動をするベースとなっているのは「食育」に対する思い入れです。生産者にとっては子供を受け入れることは大変です。柳原様からも具体的な事例を紹介していただき、どれほど大変なのかがわかりました。しかし、農業の実態を学び「食の大切さ」から「命の大切さ」を教えていくといった理念がなければ続くことがありません。現実として修学旅行生の受け入れは近年減少傾向にあります。これは需要が減っているのではなく受け入れが困難であるためのようです。農家が受け入れやすくなり、農業に関心を持つ子供が増えるよう、自治体などからの(お金ではない)協力が更に必要であると実感しました。
第10回目は蘭越町米-1グランプリinらんこし 実行委員長の向山 博 様から「日本一の『米コンテスト』を目指して」というタイトルで講演していただきました。はじめに、向山様の本業はお米の生産です。その品質は高く評価され、札幌の三越でも販売されています。お米の知識として、どのようにすればおいしいお米を生産できるのか、どのようにお米を炊けばよいのかといったお米の基本的な生産構造を学ぶことができました。また、米-1グランプリについては、どのして開催しようと思ったのか、裏話も含めてご紹介いただきました。最後に米-1グランプリの1次審査に参加した山田ゼミナールの学生が向山様と談笑していました。
このように、毎回面白く教養が広げられる講演をしていただいています。残りは5回となりましたが、ご関心のある方はぜひ受講してください。