2015年度の産業調査演習は北空知に位置する沼田町を選定しました.本年度の演習は,「大規模水田農業と地域経済の可能性」というテーマを掲げ,稲作農業を中心とする営農実態,ならびに6次産業化を念頭に置いた農産物加工の取組みを対象に聞取り調査を実施しました.
本調査は8月4日~7日にかけて3泊4日のスケジュールで行いました.
1日目は,13時から沼田町役場農業商工課にて沼田町の概要と地域産業振興に対する考え方に関する説明を受けました.沼田町は,もともと産炭地として1950年代に繁栄していたが,エネルギー革命による石炭から石油の転換に伴って町北部の炭鉱は廃止となりました.そして,鉱山業から農業へと産業構造を転換して現在に至っています.
沼田町の農業は,町内約3,000haの農地面積のうち8割が水田であるということから,稲作が卓越しているところに特徴があります.道内の稲作地域の中でも高収量であり,優等産地として位置づけられています.また,沼田町は,道内でも有数の豪雪地帯であり,雪を活用した取組も行われていることも特徴の一つです.以上の説明に対して,質問コーナーでは学生から多くの質疑が提示され,沼田町のアウトラインを掴むことがでました.
2日目は,午前9時から農業生産法人の聞取り調査を実施した.今回は,2グループに分かれて2つの農業生産法人を訪問しました.一つ目は,有限会社ウィングという法人であり,稲作を中心に130haの経営面積を有しています.二つめは有限会社HJYさくらという法人であり,こちらも稲作を中心に130haの経営面積で営農していました.どちらも,今後の経営目標としてさらなる規模拡大を掲げており,地域農業の農地の受け皿とともに雇用を作っていきたいというお話が印象的でした.午後からは,一つ目のグループが花き生産組合の組合長から花き栽培の導入経緯や北空知の産地としての位置づけなどを聞取りし,二つめのグループは,農産物加工や野菜の産直に取り組んでいる女性グループにお話を伺いました.
3日目は,沼田町直営のトマト加工工場を視察するために,午前中はトマト生産の圃場を見学しました.本来は,収穫体験も行う予定でしたが,トマトの育成状況が間に合わなかったため,加工トマトの肥培管理や作物特性に関する説明を受けました.さらに,町が直営しているトマト加工工場の見学では徹底した品質管理と安定した販路(名古屋のケチャップメーカーであるコーミ)を獲得できたことが売上総額の増加につながったというお話を伺うことができました.午後からは,実際に学生たちがトマトケチャップ作りを体験しました.市販されているケチャップとの違いや調味料のさじ加減によって味が大きく異なることなどの説明を受けながら,各自がオリジナルのケチャップを作成しました.グループごとにスパイスの比率を変えながらのトマトケチャップ作成は,学生自身も初めての体験だったようで,楽しんで取り組むことができました.
そして,午後3時からは今回の産業調査演習の調査結果を踏まえた検討会を実施した.沼田町の評価できる点や改善すべき点など学生の立場から意見を述べ,役場の職員と意見交換を行うことができました.今回の本調査は,実質3日間と短いものでしたが,学生自身にとって農業や地方圏の経済の実態を肌で感じることができるまたとない機会となりました.今後は,報告書の作成にとりかかり,年度末の完成を目指していくつもりです.改めて,今回の産業調査演習でお世話になった方々に御礼申し上げます.