経済学部では、本学教員や外部の研究者による研究成果の報告を行う研究会を定期的に開催しています。
1月23日には、学部の研究会として、中国人民大学哲学院教授、段忠橋氏による報告が“G.A. Cohen's Defense of Socialism“というテーマで行われました。
段教授によれば、カナダ出身の政治哲学者ジェラルド?A?コーエンは、社会主義について2つの重要な指摘を行いました。それは、社会変革は、人間の意識的行為であり人々の自覚的な参画なしには実現しないこと、したがって、社会主義実現のためには、人々を引き付ける社会主義の道徳的な優位性を示す必要があることの2つです。さらにその優位性をコーエン自身は、「平等」という道徳的な価値の実現に求めました。また、その場合の「平等」とは、各個人の選好の結果ではない、人々の間の境遇の差異を可能な限り社会から除去することであり、そのためには生産的資産を私的所有から共有へ移すことが必要だというコーエンの説が紹介されました。
段教授は、道徳的優位などによる広範な人々の自覚的な参画が社会主義の実現に不可欠だとする考えを支持する一方で、社会の運動法則に従って、資本主義社会が社会主義へと発展することも否定できないとして、コーエンの「行き過ぎ」を批判しました。
質疑では、生産的資産の共有について、公的所有(国有)との異同を確認する質問、生産的資産の私有を否定しなくても生産物や所得の再分配によって「平等」の実現は可能という指摘などがなされ、活発な議論が展開されました。
なお、本報告は、段教授の英語での発表と人民大学哲学院の大学院生Qiao Weiさんによる日本語通訳によって行われました。